周波数と波長のはなし

周波数と波長のはなし

アマチュア無線教科書

初級アマチュア向けの教科書というのがありまして、第四級アマチュア無線技士用とか第三級アマチュア無線技士用 アマチュア無線教科書(以下 教科書) というのが JARD から出てます。法規改正のたびに版があがって、新しい教科書になるのですが、講習会でも使われていますので、そのたびに教科書に書き込んであるのを全部写さないといけないという、結構、講師泣かせな教科書です。まあ、そこはいいとして、

講習会でも使っているこの教科書、だいたいはいいとして、工学はちょっとなー。と思うところがいくつかあって

  • 電荷の記述がない
  • 波長の説明がアレ
  • インピーダンスという単語がいきなりでてくる
  • 基本的なAM(搬送波フル+両側波帯)をDSBっていう

それぞれ問題なんですが、今回は一番簡単な "波長の説明がアレ" について

波長の説明

教科書では、

波長$\lambda [m]$と周波数$f [MHz]$ には次のような関係があります

$\lambda = \frac{300}{f}$

と書いてあります。これで終わりです。これしかないです。これで分かれ!というのはさすがにきつくて、覚えてください。以外にないですよね?といいますか、

いきなり、300 とか謎の定数が出てきます。この300という数値で書いてある式、講師やるようになってこの教科書で初めて見ました。普通はどう書くかといいますと、光速(電磁波の伝播速度)$c$を使って

$ \lambda = \frac{c}{f}$

と書きます。$c = 3\times10^8 [m/sec]$, $f$の単位は$Hz$になります。波長というのは1周期分前の時刻に出た電波がどこまで到達するかの距離で、周波数$f$の一周期にかかる時間$\frac{1}{f}$に電磁波の伝播速度cを掛けた値が波長になりますね。

$ \lambda_{[m]} = \frac{c}{f_{[Hz]}}$ の分子、分母を$10^6$で割ると分母の$f$は単位を$[Hz]$から$[MHz]$へ、分子の$c=3\times10^8[m/sec]$ は $300[Mm/sec]$になります。そこで、教科書にでてくる式 $\lambda_{[m]} = \frac{300}{f_{[MHz]}}$ になるわけです。

くらいは教科書に書いてあってもいいと思います。

少しの周波数が変化したとき波長の変化はどうなるか

教科書への不満だけではつまらないので、ちょっとだけ実用になりそうな話を

最初に結論を

周波数が1%上がったら(たとえば7.000MHzから7.070Hz) 、波長はだいたい1%小さくなる
1%2%はだいたいこれでいけると思います。

経験上そうじゃないかな?と思ってるひとも多いと思います。
以下説明。面倒くさいんなら読み飛ばしていいです

式を使った説明です

周波数$f$から$f+\Delta f$ に変化したとき、$f$のときの波長を$\lambda$、変化した波長$\lambda+\Delta \lambda$ とする

$\lambda = \frac{c}{f}$
$\lambda+\Delta \lambda = \frac{c}{f+\Delta f}$

ですね。

また、周波数から波長を求める関数 $g(f)=\frac{c}{f}$とすると、$\Delta f$が$f$に比べて十分小さいとき、

$\Delta \lambda \fallingdotseq g^{\prime}(f)\Delta f$

になります。微分が関数の傾きですからそれに$\Delta f$を掛けた分が波長の変化になります。

微分して、$\frac{c}{f}$ を $\lambda$ に置き換えると

$\fallingdotseq -\frac{c}{f^2}\Delta f = -\lambda \frac{\Delta f}{f}$

この式がどういう意味かといいますと、
$\Delta f$が$f$の1%だと、$\Delta \lambda$は$\lambda$の-1% になる。
周波数が1%上がったら、波長はだいたい1%小さくなる
ということになります。

周波数の変化が小さいとき。が条件です。ここ忘れないように! 1%,2%くらいはいけるんじゃないでしょうか。概算で波長の変化が知りたいときは、ちゃちゃーっと計算しましょう

 おまけ

上の方では微分で説明しましたが

$\Delta \lambda =  \frac{c}{f+\Delta f} - \frac{c}{f}$
$=c \frac{f - (f + \Delta f) }{(f + \Delta f) f} $
$=-c \frac{\Delta f}{(f + \Delta f) f}$

$\Delta f \ll f$ により

$\fallingdotseq -c \frac{\Delta f}{f^2} = -\lambda \frac{\Delta f}{f}$

でもいいです。というかこっちの方が簡単ですか?やってることは-1次の微分なんですが

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